沖縄4日目
この日は飛行機でもらったパンフレットに載っていたシュノーケリングに行く。
しかもこのお店パンフレットに付属されている「旅クーポン」を使うと通常価格の五千円から千円も割引があるのだ。
よくやった!!アサノ!!
シュノーケリングの開始が10:15
液晶に光る8:30の文字
シュノーケリングは開始15分前までに受付をすべて済ませていなくてはいけないこと、対する自分らの用意はなにもできていない。
慌ててシャワーを浴びて野郎どもを叩き起こして車を出しました。
沖縄人の運転にもラグの激しいカーナビにもすっかり慣れ切った車
「常識では不可能なスピード」
10:00を回るか回らないかで到着。
怒涛の猛追でやって来た一行を迎えたのは薄暗い受付の横でうろたえる二つの影。
聞くと僕らと同じ時間のツアーに一ヶ月前から申し込んだのだけど、受付所には鍵がかかっているし店に電話しても出ないしで八方塞がりなのだと言う。
うろたえる綺麗なお姉さんの横にはよく似た目をした初老の女性、お母さん孝行で沖縄に連れてきたことが容易に想像できた。
確かに沖縄では沖縄時間といって、ツアーが遅れたりすることは良くあるそうなのだが、受付所も開いてないし電話も通じないのは流石に沖縄時間を理由に出来なくないか、と憤る車内
ビキニギャルの不在と自分が予約していたツアーが始まらない焦燥感に板挟みのアサノ
諦めて食べる飯を何にするかとそれぞれが食べログを開き始めた10:35
なんかオッサンがきた
しかも昔はヤンチャしていた雰囲気を漂わせてる50歳前後のオッサンだ
のろのろやってきて極めつけに
「みなさん、受付は済ませましたか?」
は?
受付所が開いてないのにどうやって受付すんだよタコ助、と武闘派のキクチが何処からともなくアイスピックを取り出すのを必死になだめる
しかもこのオッサン遅れてきたのに詫びの一つもない。
誰もが、「沖縄はクソ」と思った瞬間だった。
「料金は二万円です」
クズがしれっと言い渡す。
ここはクーポンがあるから四人で一万四千円なんだよな〜と後ろを見ると、必死の形相でカバンをごそごそやるアサノ。
「クーポン忘れてきたかも」
震える声で言うアサノ、再び縄文時代に巻き戻る一行
車の中を探してもクーポンは出てこなかった
心なしかにやけて見えるクズに二万円を払って、手渡されたウエットスーツに着替える。
ウエットスーツを着て少しご機嫌
「そこ曲がった先にある緑の屋根の建物が集合場所なんで」
とクズの指示に大人しく従い歩みを進める
緑の屋根があった、
アサノが先人を切って進む。
先頭の足が止まる。
ツアー参加者の代わりに目に飛び込んできた揚げ物をしている老人の姿。
つけっぱなしのワイドショーとよれよれのタンクトップ。
おじいさんはウエットスーツを着た僕らを一瞥すると、すべてを察したような微笑を浮かべた。
後ずさる一行。
僕たちは緑の屋根をした民家に突撃していたのだ。
きっと年に何回かあるのだろう、おじいさん仏のような微笑みが忘れられない。
とりあえず港に出ると緑の屋根のテントが遠くに見えた、同時に僕たちを抜かしていくクズの車。
あの野郎、と口々に呟きながらテントへ走った。
船はウエットスーツを着込んだツアー参加者でほぼ埋まっていた。
あのお姉さんとおばさんの姿もあった。
僕らを乗せた途端に岸から離れる船、向かう先には小さな島が。
クズは完全にお姉さんにメロメロだ、僕たちへの説明は明らかに先程よりも簡素化されている。
ポイントに到着するとクズに入水を促されたが海は青黒く、底など見えない。
ビビってもたもたしていると、はやく入れと言わんばかりの目で見られる。
意を決して入水、浮き輪がわりのウェイクボードにつかまる。
一方お姉さんはクズに手を貸してもらい時間を掛けてするりと入水していた。
明らかな待遇の違いを笑うしかない。
クズの先導に続いて泳ぐ、
海中には図鑑でしか見たことのない色鮮やかな魚がひらひらと舞っていた。
目の前にぽっかりと口を開ける洞窟。
これが青の洞窟か、とテンションが上がる一行。
洞窟の中はツアー客ですし詰め。
なんとなく盛り下がる。
自由時間で潜水、泳ぎの苦手なアサノとキクチは辛そうだった。
お姉さんが僕の潜水を褒めてくれた。
夢中になって鼓膜が破けるかと思うぐらい潜った。
シュノーケリングが終わり、港に戻る。
クズがお茶をすすめてきたので少し見直した。
お姉さんたちに別れを告げて美ら海水族館の近くで昼飯。
いかにも沖縄に憧れて建てましたといった建物だった、たいてい沖縄愛をこじらせている人がオーナーなのだがここのオーナーはとても気さくでいい人だった。
タコライスセット900円
これからビーチに行くことを伝えると、無料駐車場の場所と行き方を他の客のオーダーもとらず熱心に教えてくれた。
人柄もインテリアも素晴らしく、美ら海水族館にもとても近い立地も申し分ない最高の店に足りないのは料理の腕だけだった。
オススメされたビーチへ
海なし県民の本気を見せる
大自然で育っただけあって高さが違う
ビーチフラッグ対決で顔面を擦りむいた後はそこらじゅうに落ちているナマコを集めて遊んだ。
ナマコを股間にあてがう→空を見上げながらナマコをそびえたたせながら浮く→水から出されたナマコが驚いて潮を吹く
という最も低俗なピタゴラスイッチを爆笑しながら繰り返す。
クーポンの件からやたら低姿勢なアサノ
最後の晩餐は焼肉にしました。
味は普通でしたが、店員は巨乳でした。
雨の中なんとか車を走らせ帰宅。
最後の宿だというのに1ミリも名残惜しくはなかったです。
夜の散歩でひとんちのヤギをこれでもかというくらい触りました。
最終日
宿代を払い終えて、レンタカーを返し、空港で帰りの便を待っているとき
何かに気づきました
「スッ…」
409号室と書かれた謎の鍵です。
部屋に鍵はなかったので本格的に何の鍵かわかりませんでした。
「大きくなってまた、帰ってこい」
帰りの飛行機の中で見た夢で宿のご主人が穴の開いた緑のシャツを着て優しく言ってくれました。
おしまい。