Thoughts at 3AM.

記憶の補完

久しぶり




五限をサボって今日提出のレポートを書いていた。


二時間を過ぎた頃にようやく半分あたりまで仕上がったので、残りは家でやろうと荷物をまとめて外に出た。

群青色の空を期待していた反面、やけに明るい空が目に入って拍子抜けした。


ついこないだまで課題の為に居残りをすれば、頭上高く月が出ていて「何かを成し遂げた」気にさせてくれたのだが、ずいぶんと日の長くなった6月は違った。

一番星も探せないような空が二時間程度で根負けした僕を指差して笑っているような気がした。


バックパックを乱暴におろし、PCルームの椅子に再びどっかりと腰掛けた。
再度要求されるパスワード、何故か二回間違える。

それから30分ほど残ったのだが結局レポートは仕上がらなかった。
あの野郎こんな課題を毎週出しやがってハゲちまえ、と思ったが教授の頭はとうに禿げ上がっていることを思い出した。


荷物を背負い直して吸い込まれるように図書館に入った。何度も入っているはずなのに学生証を通すところで毎回のようにもたつく。先日はクレジットカードを通して見事に阻まれた、機械もビックリしただろうな、と自分でも笑った。

手持ちの本を読む気にもなれなかったので雑誌を物色し始めた。いつも立ち読みするTRANSITの離島特集を手に取る。

気になったフレーズをメモしつつ読み進めるいつものパターン。図書館に人があまりいないことが何よりも嬉しい。

読み終わった雑誌を棚に戻して、正門を目指す。外はサークル終わりの学生でにわかに賑わっていた。当然ながら知り合いの影はなく、肩を落とした、仕方なく手を絡ませて歩くカップルの背中を睨みつけながら帰った。

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池袋のホームで熾烈な座席争いを見た。働き盛りのサラリーマンと壮年の男性。二つの座席の上でオッサン同士のケツがぶつかり合う、お互いにバツの悪そうな顔をしたあと、言葉も交わさずにそのまま座席に収まった。最初から二人分あるのだから争う必要なんか全くなかったのに、と椅子取りゲームに勝利した僕は思う。

そんな中、ゆったりと吊革につかまったサラリーマンがいた。

手首に留まったIWCポルトギーゼ、きっと降りる駅も近いんだろう。やっぱり余裕がある男は違うな、と痛感した。

誰のためにつけられているかわからない冷房の中で揺られること約一時間。
やっと電車から降りられた。


エスカレータを下る疲れ切ったサラリーマンの横をすりぬけた。去年から履いている白いスニーカーは軽やかに段差を駆け下る。

外に出た。

月は雲に隠れて見えなかった。