Thoughts at 3AM.

記憶の補完

雑記

 

 

 バイト先の事務所で坂本慎太郎の「まともがわからない」を流していると、先輩からアサミはこの頃古い歌謡曲みたいなのばっかり聴いてるな、と言われて、そうでもないっすよ、と返したのだけれど、youtubeのあなたへのおすすめの欄を見てみると荒井由美 大瀧詠一 はっぴいえんど が並んでいたのであながち先輩の指摘は間違っていなかった。

 

 つい最近吾亦紅の店員さんとレコード談義をした。盛り上がったところで店内の最高の音響でyogee new waves の Fantastic showを流してもらってとっても嬉しかった。

 

 いまは良い、現在流行っている音源はもちろんのこと過去に発表された音源もある程度youtubeapple musicからアクセスできるし、円盤が欲しければディスクユニオンで誰かが手放した時代の名盤を手にすることもできる。本当に現代っ子でヨカッタなあと思う反面、1984年に青春を過ごしていたらどんな人間になったのかな、と劇場版うる星やつらを見ながら思ったりもするのです。

 

 相米慎二台風クラブがmitsumeのMVに使われていて、なんだか嬉しくなった。

 

 同居人に髪を切ってもらったのだけれど、彼の技術不足とおれの顔面のわるさがお互い足を引っ張りあって12/100点って感じの仕上がりになってしまって深夜の月極駐車場でゲラゲラ笑う出来事があった。

 

2016/03/21

 
 
 三月。 僕は就活地獄の真っ只中にいる。
 
 今日もゴキブリみたいなスーツにふてくされながら身を包んで、合同説明会に重い足をひきずった。 国際展示場前には同じようなスーツで同じようなストライプのネクタイの男、前髪をデコに貼り付けた化粧っ気のない女たちが東京ビッグサイトに向かって列をなして血に飢えたゾンビのように行軍していた。本当は誰も行きたくないくせに。 そんな行列にまぎれて、僕もゾンビのような顔をして歩く。前日、同居人と、小金持ちのババアは結構な確率で浮気をしているだのなんだのとクソみたいな話題で盛り上がってしまったので、いつにもまして目の下のクマは黒い。
 
 面接では個性を出さなきゃいけないらしい。ソシャゲの初期アバターみたいな格好を強制しておいてどの口が言うかといった話だが、そんな矛盾にも耐えなくてはいけない。もちろんシューカツを辞めればアホらしい慣習からもいちぬけぴーできるのだけど、そんなリスクを取る勇気がないからこんな風に便所の落書きで発散するしかないのだ。あまりにダサく見るに堪えない姿だ。ちょうど一年前、大学の就活支援室にひしめくシューカツ生の群れを見たときに気が狂っていると笑ったが、いまや僕はその列に並ぶようになった。時の流れは世知辛い。
 
 
 会場を出るまでに数社の説明を受けた。どこの説明会に行っても最前列には、キラキラした目で人事を見上げて一挙一動にそれこそ首が取れるほど頷いているヤツがいるもんだ。自分もああなれればよかった。一つのやりたいことに向かって自分を最適化しながら生きる人生、きっと幸せだろうと思う。
 
 いくつもの可能性が輝いてるけど、この体はひとつだけなので否が応でも来年までの間に意中の御社に身を置かなければ、僕のシューカツは世間的に見て失敗になるだろう。世間がなんだ、俺は海外一周の旅に出て好きなことをやるぞ、と言いたいキモチもなきにしもあらずだけど金がないだのなんだのとやらない理由を見つけるのが得意なもので、今日もまた空虚に、きわめて単調に過ごしてしまうのだ。
 
 

アルバイト

 

バイトの話だ。
 
 
今のバイト先は勤務中にDVDが四本見れるほど治安が良く、2時間弱電話をしていても割り与えられた仕事さえこなせるようであればなんの叱責も受けない楽園のような場所である。ここまで書くと、ああそうなの。よかったじゃん、程度に思うかもしれないがそうでもないのである。
 
田舎ということもあって、本当に暇なのだ。
 
近所のコンビニエンスストアをイメージしてほしい。おでんが置いてあって、400円でそこそこ美味い弁当が食える24時間営業のやつだ。次に、レジ前が混んでいて少し並んで待たなきゃいけないぐらいの混み具合をイメージしてほしい。序盤から要求することが多くてこちらとしても心苦しいが、こうでもしないと一般ピーポーの諸君に我がコンビニの驚異的な過疎具合を伝えることができない。
 
 
先ほどイメージしてもらったコンビニの5兆倍暇なのが我がコンビニの深夜帯である。
 

後期高齢化社会を体現するかのようなこの土地で、夜中にコンビニを利用するのは便所探しのトラックドライバーか代行を連れた酔っ払いぐらいのもので、基本的に客がいない。客がいないから当然店員もすることがなく十中八九事務所に引き上げている、世にも奇妙な無人コンビニはこうして作られる。

 
別に暇なことは悪いことではない。暇を生かして大学の課題作成をすることもできるし相方さえ許せば仮眠もとれるので良いっちゃ良いのだが、勤続が一年を超えたころからこのまま田舎のコンビニ夜勤で歳をとって就職するのもなんだかな、とぼんやり思うことが多くなった。

 
塾講師、漬物工場、ドカタとジャンルを問わないクロスオーバーなプレイで地元のハコを盛り上げ続けてきた自分でも今だかつて足を踏み入れたことのない領域がひとつだけあった。飲食業界である。

 
飲食と聞くと居酒屋が真っ先に頭に浮かんだが、見ず知らずの他人のゲロをつめたい東京の街でひとり片付ける自分の姿を想像してあまりの不憫さに泣きそうになったので、こちらから不採用の烙印を押させていただいた。でもでも駅のホームにゲロとかあるとつい見ちゃう。うーわ、コイツもうどん食ってんのかよとか思っちゃう。
 
 
今をときめくおしゃれボーイのおれは居酒屋なんか選ばない。ここで多くの田舎者たちは小洒落た喫茶店や、バーを想像しただろうがまだまだである。常に一歩先を行くのがおれのモットーだ。



正解はカフェバーだ。



どう考えても最強だ。

昼も夜もお客を掴んで離さない、ナウなヤングにバカウケのお店で最近、おれは働きはじめた。


最強ポイントは他にもある、バーテンの先輩がステータスを容姿に全振りしたようなとんでもないイケメンなのだ。女性で言う所の堀北真希だと思っていただければなんとなくそのヤバさが分かるだろう。

身長180超えでバーテンダーでイケメン、ここまでくると、彼のチンコが2cmしかないとか、趣味が野良猫の舌を切り取ってビンに入れて保存することとかじゃないと割に合わない。彼と初対面した時、「天は二物を与えず」が嘘であることを実感した。


初出勤でイケメンと一緒。アタシなんだかドキドキしてる。彼に肩を叩かれるたびにアタシ女になってる。とか考えながらグラスを洗っていたら割れたワイングラスで指先をパッカーンしてしまった。恋に痛みはつきもの、誰かがそう言っている気がした。その2時間後、「オハヨウゴジャマース」とスパイシーな風貌の男がカウンター内に入ってきた。


彼の名はナレック。カレーの民だ。


彼がカウンターに入ることで一気に場がまろやかになる。あのまま二人きりだったらきっとおれは骨抜きの乙女になってしまっただろう。しかしナレックは俺よりも仕事が出来、場慣れしているはずなのに全く安心させてくれないのだ。



まず、初対面なのにベンガル語で話しかけてくる。


あまりにもフレンドリーが過ぎるぞナレック。適当な表現が見つからなかったからといって英語にベンガル語を織り交ぜるのもナシだ。あと締め作業中の店長に向かってお皿拭いてとか言うのもやめろ、第一そんなに仲良くないだろう。

なぜかその日はおれが03:15に退勤させられ、ナレックは残った。案外やつは店長と仲がいいのかもしれない。退勤間際、ナレックからこの店にはベンガル語話者があと2人いることを告げられる。仲良くやっていけそうな気しかしない。


明日もカウンターにはイケメン、ナレック、おれで立つことになる。不安でいっぱいだが、それでも楽しくやっている。


サイコーだ。ただしベンガル語だけはかんべんしてくれ。

 

480円に馳せる思い

 

 

3週間前、21歳になった。

 

バイト先の後輩くんが成人式に何もっていけばいいんですかね、何時集合ですかと矢継ぎ早に質問してくるのを返信しながら、もう21歳か、とティーンエイジャーをとっくに抜け出した現実をチラ見する。

 

大学進学に伴うモラトリアムの延長で、二十歳の意義が薄れつつある気がする。

 

僕は社会に出ているわけでもないので二十歳になったからといって生活が変わるわけでもなかったし、途端に自意識が芽生えるわけでもなかったので、いまも親の住む家に住んでタダ飯を食らい、金も払わずに寝床で眠る生活を続けている。

 

なんの因果かわからないけれど、去年成人式をやった日と同じように今年もスーツを着ていた。晴れの日のためではなく、合同説明会で商品として振る舞うために。僕が年齢について考えようと考えまいと、取り巻く環境は急激に変わりつつある。

 

 

成人で解禁されたおたのしみの中でまだ行使をしていない権利がひとつあった。

 

 

タバコだ。

 

 

今までは、タバコは吸わない!とわけもなく公言したり、友人に半ば強引に禁煙を誓わせたりもするぐらいタバコが嫌いだった。


多少お酒が入ると友人のを一本拝借して吸ってみたり、先輩のタバコ休憩に付き合っているときの手持無沙汰でふかすことはあったが、分かったふりをして吸うタバコに味はなかった。


ある日の帰り道、いつも通り逃げ込む友人宅にも先約がいて、心身ともにボロボロになって電気の消えた居酒屋の店先にへたり込んだ。

長い息を吐いてうつむくと、ポケットの中に四角い感触。親父のタバコだった。


どうにでもなれ、と火をつけた。


吐き出すため息は白く濁って、やがて夜風に溶けていった。


案外悪くない、とニヤけた記憶がある。


何よりそのとき、なんとも名状しがたい自信が湧いて逃すつもりだった終電間近のホームまで走ることができた。


このことがあってから、何か区切りをつけたいときにタバコを吸うのがクセになった。


これを機に、一概に意見の合わないものを悪としていた自分の見識の甘さを恥じたこともあって、勉強料程度にこれからも少しならいいかなと思った。


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あと、前よりコーヒーが好きになった。


そんなこんなで、今日も覚えたてのタバコをふかしています。


味なんてわからないけど、少しだけ大人になったような気持ちで。



大晦日



今年が終わるのを今か今かと待ち受けているこの瞬間、なかなか不思議だなと毎年思います。


今年もみなさんおつかれさまでした。



学生だったり、社会人3年目、1年目だったり立場はそれぞれ違うけれど



みんな


理不尽な理由で頭ごなしに怒られたり

先輩のミスを被らされたり

寝坊して待ち合わせに遅れてしまったり

今の若者は、とバカにされたり

陰口を叩かれたり、負けじと言い返したり

どうしても行きたくなくてサボったり

寂しくて、自分のことを大事にしなかったり

飲めない酒飲んでゲロ吐いたり

必要のないウソをついたり

嫌いな人のことを避けたり

自分じゃない人になろうと努力したり

自分の至らなさで悔しくなったり

いろんな人に心配をかけたり

大好きだった人を失ったり

約束を破ったりしました。

大変だった思い出は、きっと自分の糧になっています、そう信じましょう。


なんといっても今日は大晦日。

おめでとうございます。
ここまでなんとか2015を生き抜いてきました。


2015のはじめから、ずっと頑張ってきたあなたが確かにここにいます。


もしかしたら今も

てんてこ舞いの居酒屋の厨房で

年始セールに大忙しのアパレルショップで

酔った客を相手するコンビニのバックヤードで

家を目指しひた走る電車の中で

あなたは何かと闘っているかもしれません。

本当におつかれさまです。


せめて今日と明日は、

自分の好きなものを食べて 

ガハハハと初笑いをして

少しお昼寝をしてみたり

自分を甘やかしてみてください。


きっとそれからでも、2016を頑張るのは遅くないはずです。


2016は今年よりも

人を好きになりましょう

自分を信じてあげましょう

周りに好きと伝えましょう

心躍るひとときを大事にしましょう


今年も健やかで、素晴らしい年になりますように。

みなさん一年おつかれさまでした。



月齢3.4

 
とても薄い月を見た。
 
TSUTAYAに向かうとき気づいて、肌が乾燥するのも気にせずにヘルメットのシールドをあげた。
 
太陽の当たる部分こそ限りなく薄くかったが、陰になっている部分が夕闇の中で、ぼうっと浮き上がって見えるいい月だった。
 
おまけに星も綺麗だったので、陸橋の上で少し立ち止まって眺めてしまった。
 
それからずっとドキドキしてしまって、TSUTAYAで立ち読みした雑誌の内容なんかぜんぜん頭に入ってこなかった。
 
アイスとコーヒーを平らげてもなお、あの月のことが気にかかっていた。
 
周りに街灯のない開けた場所で見たかったので、小学校にバイクを停めて校庭まで歩いた。
 
 
砂利を踏みしめる音さえも響く無人の学校。
二階の窓から覗く非常灯の緑色が眩しい。
 
 
校庭の真ん中で夜空を見上げると、月はもうどこかに行ってしまったようだった。
 
ぐるぐると回転して探していたとき、そびえる砂時計の横、東の空を一筋の光芒が
 
 
 
ツーっと尾を引いて、消えた。
 
 
その途端、妙に寂しくなって。
フェンスを乗り越えて、飛ばして帰った。